画材は良質な栄養です

画材、特に透明水彩絵具が好きです。趣味は混色表作りです。

三原色(RBY)の混色表と、その考察

こんにちは、Mioです。今回は三原色の混色のおはなしです。

 

色材の場合は必ず減法混色(混ぜると暗い色になっていく混色)になるとはいえ、理論的には三原色を使って様々な色が表現できるはずです。

ではなぜ様々な絵具が販売されているのでしょう?

 

今回は、混色でできることとできないこと、たくさんの絵具が販売されている意味について考えてみようと思います。

 

ええと…なにかなぁ…?

実際に三原色の混色表を見てみようか

 

▼目次

 

RBYの混色表 ーー 2色の混色で色の変化の傾向を見てみよう

今回はRBY=赤青黄の3色を用いて、それぞれの2色混色を表にしてみたものを紹介します。

 

使用した絵具は、全てホルベインの単一顔料色で

赤🟥:ピロールレッド(PR254)

青🟦:フタロブルーレッドシェード(PB15)

黄🟨:イミダゾロンレモン(PY175)

です。

 

 

🟥ピロールレッド(PR254)× 🟨イミダゾロンレモン(PY175)

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🟨イミダゾロンレモン(PY175)× 🟦フタロブルーレッドシェード(PB15)f:id:chu-cool:20230302135038j:image

 

🟥ピロールレッド(PR254)× 🟦フタロブルーレッドシェード(PB15)
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2色の混色で こんなにいろんな色が できるん だね

そうだね、でも足りない色もあるんじゃないかな?

ほんとだ…えっと、茶色に、ピンクに…

 

そう、2色の混色だけではできる色味に限りがありますので、それ以外の微妙な色の違いは、3色の混色で表現する必要があります

 

 

 

 

 



 

3色混色の実践 ーー 茶色を作ってみよう

色彩は一つの名前で決まりきっているわけではなく、様々な呼び方があります。PCCSやマンセルなどのように、それぞれの表色系の法則に従って記号と数値で表記することも可能です。

 

例えば茶色は、暗いオレンジや鈍い黄赤…などなど、別の言葉で置換できます。

 

それを元に茶色の混色を考えてみると、まずは🟨PY175+🟥PR254でオレンジ系の色味を作り、そこに🟦PB15を加えて彩度を落としていくというのが、ひとつの手順として現れてきます。

 

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あれ? 絵皿のなかに 緑色っぽい色も あるね

混ぜる比率によって色が変わってくるんだ

 

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🟥PR254と🟨PY175を混色してまずオレンジを作る時点で、オレンジ色にも幅があることが先ほどの混色表からわかります。絵具の量・水の量それぞれの影響を受け、様々なオレンジを作ることが可能です。

 

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かつ、🟨PY175と🟦PB15の混色で緑系、🟥PR254と🟦PB15の混色で紫系の色ができるため、オレンジを構成する赤と黄色のどちらが多いかによって、緑系に傾いたり茶系に傾いたりします。
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ちゃいろって つくるの たいへん だったんだね…

できる色の幅が広いから、決めうちで作るのは難しいかもしれないね

 

様々な絵具が販売されている理由の一つとして「作るのが難しい色がある」ということが挙げられそうですね。

 

 

混色で作った茶色と茶色の絵具を比べてみよう ーー 粒状化色のこと

 

なんとか 茶色っぽいいろ、できたよ

それじゃあ茶色の絵具と比べてみよう

 

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色味は茶色ですが、絵具によって微妙に色の違いがありますね。けれど、混色で作れなくはないかもしれません。

特に違う部分はなんでしょうか。

 

よーく見てみて

ええと… あ なんだかつぶつぶしてる色が あるかも

そう、顔料の特性によっては、色以外に質感にも違いが出てくるんだよ

 

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バンダイキブラウンやアンバーは、混色で作った茶色と比べてややつぶつぶ感が見られます。これを粒状化と言います。(バーントアンバーも、メーカーさんによっては強い粒状化が見られる場合があります)

 

グラニュレーション(粒状化)
グラニュレーションとは使われている顔料の粒子が大きいか、あるいは凝集して大きな塊になりやすい色が紙表面の凹みに溜まり、ザラザラとした質感を与える現象です。

 

ホルベインの場合は上記リンク内のPDF、他のメーカーの場合もカタログやwebページなどでどの絵具が粒状化する色なのかを判別することができます。

 

つまり、混色によって色味を近づけることができたとしても、質感までもを全く同じにすることは出来ないことが多くあります。

もちろん絵具の組み合わせによって違いは現れます。しかし、混色で様々な色味や質感を表現できる一方で、表現しきれない領域もある(特に独特の質感を持つ単一顔料色)というのが、様々な絵具が存在する二つ目の理由と考えています。

 

 

 

三原色の絵具は決まってる? ーー 透明色と不透明色のこと

そっかあ つぶつぶになることも あるんだねぇ

一見なめらかに見える色でも、違いが出る場合もあるよ

えっ そう なの?

 

一応メーカーさんによってはどれが三原色に近い色かという紹介はありますが、好みの色味を使って自分なりの三原色を作ることも可能です。

 

例えば、🟨イミダゾロンレモン(PY175)を、🟨カドミウムイエローレモン(PY35)に変えた場合どうなるのか、試してみましょう。

 

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色は よく 似てるね。 でも、 カドミウムイエローレモン の方が、 なんだか はっきりした色に 見えるかも

不透明色だから、下の紙の色を覆って顔料の黄色が際立っているんだね

 

イミダゾロンレモンは有機顔料の一種が用いられており、透明性を持っています。

一方無機顔料を用いたカドミウムイエローレモンは、元々の顔料が不透明性を持っています。その分、水加減で強い色から淡い色まで幅広く表現することができます。

 

ほんとだ いっぱい水を入れても 色が残ったまま 伸びていくね

カドミウムイエローレモンは色が強いから、イミダゾロンレモンの時よりも、青を混ぜる量が少しだけ多くなったね

おなじように 見えるいろ でも 性質がちがうん だね

 

透明色・不透明色については、絵具のチューブやカタログ・webページなどに記載がありますので一度お手持ちの絵具を確認してみると面白いと思います。

 

色は本来、単体で存在することはありません。1色のみで試し塗りをした場合も、実際には「紙色の白」と共存しており、「白(セパレーションカラー)があるからこそ、他の色と区切られて単色を見ているように錯覚している」という風に言うこともできるかもしれません。

 

なので、単色で見ていると同じように見える色でも、混色によってその色(顔料)の持つ性質があらわになることがあります。

もちろん、重金属を用いた色とその代理色、という分け方もあります。

しかしそれ以外にも、顔料によって特性が異なり、できる表現が変わってくるため、似ているようで違いのある絵具があるのだと考えています。

 

ぜんぶは おぼえられない かも…

現代の絵具は安全性を考えられたものが多いから、基本的には好きな色を使ったら良いと思うよ

まぜても まぜなくても いいん だね

 

多くの絵具が販売されているは様々だと思いますが、個人的には

  1. 作るのが難しい色がある
  2. 混色だけでは表現しきれない領域もある(特に独特の質感を持つ単一顔料色など。最近はラメや偏光色も多い)
  3. 顔料によって特性が異なり、できる表現が変わってくるため、似ているようで違いのある絵具がある

の3点が挙げられるかなと思います。

 

絶対に混色をしないといけないというわけではなく、チューブから出したまま使うのがダメというわけでもなく、用途に応じて好みの色を使って楽しく描けるのが一番だと思います。

 

たくさんの絵具を使えることのしあわせ…🤤絵を描くだけでなく、色で遊ぶことについても、いずれ記事にしてみたいです◎

 

ちなみに、二つ折りパレットで三原色塗りをする場合は、単色使い用・混色用×2という風に、小部屋を3つに分けて絵具を出すと使いやすいです。

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特に黄色はちょっとでも別の色が混じるとすぐに色味が変わるので注意が必要です。単色使い用の小部屋を作っておくことで、それを防ぐことができます。

 

長くなってしまいました💦それではまた!